脳の働きをよくすると思われていることが多い糖質ですが、実はあまりよくない影響をおよぼす場合もあるのです。
脳のエネルギー源として働く糖質
人間のエネルギー源として欠かせない栄養素であるブトウ糖ですが、特に、人間の身体を司る重要な器官である脳は、そのエネルギー源のほとんどをブドウ糖に頼っています。その必要量は人の身体が消費するエネルギーの約25%にものぼります。糖質を極端に制限してブドウ糖の供給が不足すると、脳の働きは低下してしまいます。
神経活動が行われるときにはブドウ糖が使われるため、血中にブドウ糖が豊富にあると記憶力が増すといった研究結果も報告されています。脳をしっかり働かせるためには、ブドウ糖のもとになる糖質が欠かせないというわけです。
過剰に摂ると悪影響も
しかし一方で、糖質の過剰摂取が、脳の機能を損なう可能性もあります。
脳の働きへの影響
糖質を大量に摂取すると血糖値が急上昇し、血糖値を一定に保とうという身体の働きで、すい臓から大量のインスリンが分泌されます。インスリンの働きで今度は血糖値が急激に下がり、正常よりも低くなってしまいます。それにより、脳のエネルギー源となるブドウ糖が不足し、集中力や計算力などの脳の働きが落ちてしまうのです。
ただし、人の記憶力にとって血糖値は高い方がよいのか低い方がよいのかについては議論があります。血糖値の高いグループと低いグループで、あらかじめ伝えておいた15個の単語を30分後にいくつ思い出せるかをテストしたところ、血糖値の高いグループの方が思い出せる単語の数が少なかったといいます。このことは、運動習慣や摂取カロリーのコントロールによって血糖値が高くなるのを防ぐことで記憶力や認知機能によい影響が出る可能性を示唆しています。
糖質依存による影響
日常的に糖質を摂取し過ぎていると、より多くの糖質を欲するようになり、欲求が満たされないと、イライラしたり、集中できなくなったりします。このような状態を糖質依存といいます。
糖質を摂取すると脳のA10神経系というところが刺激されます。すると、ドーパミンという脳内物質が分泌されて、強い快感をもたらします。これは脳内報酬系と呼ばれる仕組みで、コカインなどのドラッグを使用したときに快感が得られるのと同じシステムです。
そうして糖質に依存すると、脳の機能を損なうサイクルをくり返すことになります。
脳のためにも、体のためにも、適度な糖質摂取は必要です。ただし、それは炭水化物、タンパク質、脂質のバランスが適切に保たれていることが前提となります。糖質だけを単独で大量に摂取することは避けるべきでしょう。
振り返りやまとめ読みに便利。クリップで記事を保存!
クリップ機能を使用するには、会員登録(無料)が必要になります。