いくつかのルールを守れば、好きなだけ食べてもよいとされる糖質制限。新たなダイエットのセオリーとして、数々の雑誌などでも特集が組まれるほど話題になっています。伝統的なダイエット法として知られるカロリー制限と、どちらがより効果的なのか、それぞれのメリット、デメリットなどを検討しながら紹介します。
糖質制限で痩せる仕組みと効果
糖質制限で痩せられるメカニズムとは、糖質を含む食品の摂取を控えることによって、食後の血糖値の上昇を緩やかにし、別名「肥満ホルモン」とも呼ばれるインスリンの分泌を抑えることです。
インスリンは主に、食後、血中の糖濃度が上がった際にそれを下げるために分泌されますが、このほかに脂肪を蓄える作用もあります。一方で、脂肪分解を抑制する作用もあるので、分泌量が増えると太りやすくなるのです。しかし、糖質制限をすることによりインスリンがあまり分泌しないような食生活を送れば、体内で以下にあげるような効果が見込めます。
脂肪の分解が促される
インスリンによる脂肪分解抑制作用がないので、脂肪が燃えやすい状態になります。
インスリンの追加分泌がほとんどない
インスリンは常時、血中に一定濃度で分泌されているものですが、食後に一時的に上がってしまった血糖値を下げるために追加分泌されます。ところが、糖質制限された食事では、食後血糖が上がらないので、この追加分泌が起こらない、というわけです。
糖質制限のメリットは、食後に眠くならない、血糖値の上下動を抑制、比較的早く効果が出やすい、といったこともあげられます。
反対にデメリットは、ごはんやパンといった炭水化物が好きな人には向かない、必然的に肉や魚を摂る量が増えるので食費がかかる、カロリー制限に比べて比較的歴史の新しいダイエット方法なので、長期的なのに健康影響に関する臨床データがまだない、などです。タンパク質や脂質の摂取量を増やせば、長期的に腎臓や大腸に負担がかかるのではないか、ということも気になるところです。
カロリー制限で痩せる仕組みと効果
カロリー(kcal)とは、体を活動させるエネルギーの量です。食事によって摂取するカロリーを、活動や人が生きていくための基礎代謝で消費するカロリーよりも低く抑えることによって、体重を減らすことができる、というのが、カロリー制限で痩せられるメカニズムです。
たとえば、1日に活動+基礎代謝で消費するカロリーが2000kcal程度だとします。食事で摂取するカロリーを1800kcalに抑えられれば、1日あたり200kcal分、減量効果が見込めます。
実際、脂肪を1kg減らすためには、7200kcal程を消費すればいいとされているので、7200÷200=36、つまり、消費kcal-摂取kcal=200となる生活を、36日間続ければ1kg減らすことができる、という計算です。消費カロリーを増やせば増やすほど、または摂取カロリーを減らせば減らすほど、減量効果は早いということになります。
カロリー制限のメリットは、設定した摂取カロリーの上限値の範囲ならば、ある程度何を食べてもよいことです。スイーツでもステーキでも、大好物をあきらめなくてもよいのです。また、栄養の偏りなく必要量のカロリー摂取さえ行なえば、既に安全性が証明されているダイエット法であり、安心して実践することができます。
デメリットは、ひとつひとつの食品のカロリーを調べて、足していく計算が面倒であることです。しかし、最近では、コンビニ商品やファミリーレストランなどの外食でもカロリーが表記されているケースが多々あり、上手に取り入れれば簡単に行える条件がそろってきました。
ダイエットに効果的な食事制限方法はどちら?
糖質制限とカロリー制限、どちらがダイエットに向くかは、取り組む人の食の好みや行動パターンによって決まると言えます。ひとつひとつのカロリーを記録して足していくなんて、面倒なことは苦手という人であれば、糖質制限が向いていますが、炭水化物大好き、好きなものを食べられないのが嫌だ、という人には糖質制限は酷ですし、長続きしないでしょう。
それぞれのダイエットのメリット・デメリットをよく吟味し、自分に合うのはどちらかを検討して取り組みましょう。
糖質制限による健康影響についての注意事項
[1]Gary D. Foster, et al. A Randomized Trial of a Low-Carbohydrate Diet for Obesity, N Engl J Med 2003; 348: 2082-2090
[2]"日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言"日本糖尿病学会.http://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?page=article&storyid=40(参照2017-06-29)
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