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疲れ、全身倦怠感に適した漢方薬

更新日:2016/12/09 公開日:2016/06/20

疲労回復の方法

疲労感や全身倦怠感は、医療機関等で検査をしても原因が特定できない場合があります。そこで活用しやすいのが漢方薬。体力低下や免疫機能、自然治癒力を高める漢方について、東洋医学に詳しい漢方専門医が記事で解説します。

日常生活において、疲れや体力の低下、全身倦怠感はさまざまな場面で起こります。原因に関しても多岐にわたり、風邪、病気、過労による睡眠不足などが考えられます。そこで活用しやすいのが漢方薬です。漢方薬は多くの症状に対応できるほど種類が豊富です。

疲れと気血水

単純な疲労感は、臨床の場面では術後の不定愁訴や抗がん治療などの予後、慢性疾患の疲労など幅広く考えられます。

東洋医学でいうと、疲労感は気・血・水のバランスのどこかが崩れても起こります。

気の異常

「こころ」の異常や肥満など「気」の停滞に病態が多いです。

血の異常

血分不足と捉えて生体の物質的な側面の不足による機能障害を指します。血の停滞は微小循環障害を指す事もあります。

水の異常

浮腫や体液の機能異常、水の体内での偏在を指します。

疲労の症状のかたち

気の症状

易疲労感や食欲不振、無気力感、気疲れ、不安、頭痛、不眠、焦燥感などがあげられます。

血の症状

頭痛、頭重感、肩こり、後背部緊張、不眠、動悸、気力低下などです。

水の異常

浮腫、耳鳴り、めまい、肩こり、悪心、嘔吐、動悸、息切れ、多尿などがあげられます。

疲労・体力の回復に向けて使用される補剤とは?

補剤とは、体の機能を高めエネルギーの取り込みを促す漢方薬のことを指します。疲労回復、体力回復には補気剤(ほきざい)、補血剤(ほけつざい)、補腎剤(ほじんざい)などを総称して補剤(ほざい)といわれる種類のものを使用します。

補気剤

エネルギー不足(疲れやすい、食欲がない、だるい、声が小さい、下痢がしやすい、などの症状)や全身機能の衰えを治療する漢方薬の種類です。生薬には人参(にんじん)を基本にして黄耆(おうぎ)や朮(じゅつ)なども含まれている事が多いです。

補血剤

血分不足の状態(貧血、冷え、顔色が悪い、集中力低下、不眠・睡眠障害、眼精疲労、めまい・耳鳴り、月経不順、などの症状)を指します。鉄欠乏症をともなうケースが多いです。

生薬は地黄(じおう)を基本的に配合しています。地黄には微量の鉄分も含まれています。

補腎剤

東洋医学でいう腎の病態からくる症状を治していくものです。腎は生長・発育・泌尿・生殖系のはたらきのことを指しますが、それらが低下した状態を腎虚(じんきょ)といいます。腎虚による疲労とは「加齢」(エイジング)に伴うもので、骨・関節の変形によるものや腰や膝の弱り、生命活動の低下、早期の老化などからくる疲労感を指しています。

慢性疲労症候群と漢方薬

慢性疲労症候群とは、強い疲労感とそれに附随する症状のため生活の質を著しく低下させる疾患です。東洋医学的には「気(エネルギー)」の不足と解釈できます。また、虚実(きょじつ)の概念では抗病反応の弱いものを「虚証」、抗病反応の強いものを「実証」といいますが、慢性疲労症候群では虚証になるケースが多いです。

五臓の概念で捉えると、食物の消化吸収機能の低下などによる「脾の異常」といえます。

疲労に対する漢方薬

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)【補気剤】

主に胃腸虚弱な人に向けた体力回復剤です。そのため、比較的体力のない人に使用します。また、全身倦怠感(特に四肢)や食欲不振、気力の低下、顔色不良、飲食は温かいものを好む人にも使用します。

咳、微熱、動悸などの症状がある場合に緩和を促します。

普段は健康であっても過労などで気力・体力が消耗している場合に使用します。

エネルギー不足、抗病反応の弱い状態、消化管機能の低下という、正に疲労の漢方薬です。

六君子湯(りっくんしとう)【補気剤】

急性の下痢で比較的体力が低下した人に使用します。下痢だけでなく、食欲不振などの上腹部の不定愁訴に対してよく使われます。食後の眠気や全身倦怠感、手足の冷え、感情不安定などを伴う場合にも使用します。「胃もたれ感」「胃でポチャポチャ音がする」といった症状がある人にも使用します。慢性疾患で長期的に使用されるケースが多いです。

上記の補中益気湯よりも、食不振や胃腸症状が出やすい場合に使用するものです。

人参湯(にんじんとう)【補気剤】

慢性の下痢で比較的体力のない人に使用します。配合生薬の人参には、気力を高めてみぞおちのつかえを取り除く効果があります。下痢などの胃腸機能の低下、手足の冷え、薄い唾液が口中にたまる、などの症状も考慮して使用します。

冷えがあり、胃の痛みや胸の痛みのある症状に対して用いられます。

十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)【補血剤】

体力が低下している人に使用します。四物湯(しもつとう:血分を補う漢方薬)と四君子湯(しくんしとう:気を補う漢方薬)を合わせて黄耆(おうぎ)・桂皮(けいひ)を足し、生姜(しょうきょう)・大棗(たいそう)を除いた漢方薬です。病後、術後、慢性疾患などからくる疲労衰弱、全身倦怠感、気力低下、顔色不良などに使用します。

臨床の場面では、術後の体力低下、回復、失血後の貧血の改善に使用します。

人参養栄湯(にんじんようえいとう)【補血剤】

体力が低下している人に使用します。あるいは病後、術後、慢性疾患などで疲労衰弱している人に向けて使用します。中でも、特に四肢の倦怠感、貧血、食欲不振、健忘の緩和を促すために使用します。生薬の五味子(ごみし)、遠志(おんじ)が入っている事により呼吸器疾患や中枢症状に適しています。また、貧血等の血分不足の症状がある際に使用されます。

加味帰脾湯(かみきひとう)【補血剤】

胃腸の働きを改善する四君子湯(しくんしとう)がベースになっている帰脾湯(きひとう)に、柴胡(さいこ)や山梔子(さんしし)、血行を改善する牡丹皮を加えたものです。体力が低下している人や、顔色が悪く貧血傾向、精神不安、健忘、不眠などの精神神経症状を訴え、全身倦怠感をともなう人向けに使用します。

六味丸(ろくみがん)【補腎剤】

八味地黄丸から桂皮(けいひ)と附子(ぶし)を除いたものです。比較的体力のない人や、冷えがなく口渇があるなどの症状を訴える人に使用します。腰部および下肢の脱力感、しびれや耳鳴、めまい、ふらつきなどの症状が使用するポイントです。

八味地黄丸(はちみじおうがん)【補腎剤】

体力は普通、または虚弱な人に使用します。特に高齢者に頻繁に使用され、胃腸機能が健全で、特に加齢に伴う腰部および下肢の脱力感、冷え、しびれ、頻尿耳鳴の緩和を促すために使用します。基本的には胃腸障害のない人、加齢にともない血管から老化していく人に使用します。

最後に

倦怠感に対して漢方薬は比較的安心して使うことができ、また体質改善のための非常に有用なツールです。慢性的に疲労が続く場合は、必ず血液検査もしておきましょう。身体疾患や、ビタミンB群の不足や鉄欠乏症やタンパク代謝の低下などの栄養学的な影響が背景にあるかもしれないことがわかるからです。