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不妊の原因の1つ、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは?

更新日:2017/08/29 公開日:2016/10/28

多嚢胞性卵巣症候群の基礎知識

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は不妊の原因として代表的な排卵障害の原因として最も多いもので、婦人科系の病気の中でも患者数が多いといわれています。多嚢胞性卵巣症候群の特徴を、ドクター監修のもと解説します。

排卵障害は不妊の原因として頻度が高いもので、この排卵障害の原因として最も多いのが多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)です。英語名のPolycystic ovary syndromeを略してPCOS(ピーコス)ともよばれます。2014年の「産婦人科診療ガイドライン」[1]によると生殖年齢女性の5~8%に発症しており、婦人科系の中でも患者数が多く見られる病態です。女性にとって他人事ではない、多嚢胞性卵巣症候群について詳しくみてみましょう。

多嚢胞性卵巣症候群とは

通常、卵巣の皮質と呼ばれる部分には、将来排卵する可能性のある小さな卵胞があります。これらの中から通常1個の卵胞が選ばれて大きくなり、やがて破裂して月に1回の排卵がおこります。しかし、多嚢胞性卵巣症候群の場合は、その卵胞が大きくなれず、かつ破裂しないために排卵が行われず、卵巣の中に小さな卵胞がたくさん溜まっていきます。その結果、卵巣の皮質に小さな卵胞が輪状に並び、超音波で卵巣をみると「真珠のネックレス」のように見えるのが特徴で、これが「多嚢胞卵巣」と呼ばれるゆえんです。また、男性ホルモン過剰となりやすいため、ニキビ・肥満傾向・毛深くなる、などの症状もみられがちです。それだけではなく、将来糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病、子宮体がん(子宮内膜がん)を発症するリスクが高くなるといわれています。最近では不妊治療だけでなく、それらの病気を予防する目的でも、長期的に治療・管理していくことが必要だと考えられています。

多嚢胞性卵巣症候群の自覚症状

生理不順が多嚢胞性卵巣症候群の代表的な症状になりますが、その他にもさまざまな症状が現れます。もしも、下記の中に思い当たる自覚症状があれば、早めに婦人科を受診しましょう。

  • 生理が来ない(無月経)
  • 生理の周期が39日以上(稀発月経)
  • ニキビが多い
  • 口の周りや手足、背中などの毛が濃い
  • 肥満
  • 月経前に気分の落ち込みや情緒不安定が見られる
  • 頻尿
  • おなかにガスが溜まりやすい
  • 便秘がち
  • 更年期症状(のぼせやほてり)

多嚢胞性卵巣症候群の症状について、詳しくは、『多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)はどのような症状が現れる?』をご覧ください。

多嚢胞性卵巣症候群の原因

多嚢胞性卵巣症候群については、明確な原因がわかっていないのが現状です。さまざまな要因があげられる中で、代表的なものは以下になります。

脳下垂体から分泌されるホルモンの異常

黄体化ホルモン(LH)が過剰に分泌されることで、卵胞刺激ホルモン(FSH)との分泌バランスが崩れてしまい、卵胞が正常に発育できないと考えられています。

糖代謝異常

低インスリンダイエットでも知られるインスリンは、すい臓から分泌されるホルモンで血糖値を下げる働きをします。このインスリンが正常に働かなくなることが、多嚢胞性卵巣症候群の原因の1つと考えられています。

アンドロゲン過剰症

男性ホルモンとも呼ばれるアンドロゲンの分泌が増加することによって、卵胞の発育を抑制し、排卵を妨げているといわれています。この男性ホルモンの増加によって、男性的特徴の症状が現れるというわけです。

多嚢胞性卵巣症候群の原因について、詳しくは、『肥満が関係する?多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の原因とは』をご覧ください。

多嚢胞性卵巣症候群の診断方法

診断は、問診、血液検査、そして超音波検査で行われます。日本においては、2007年に多嚢胞性卵巣症候群の新しい診断基準が設定されました[1]。それによると、自覚症状として「月経異常」、超音波検査で「多嚢胞性卵巣」、そして血液検査で「血中男性ホルモン高値、または、LH基礎値高値かつFSH基礎値正常」これら3つすべてを満たす場合に、多嚢胞性卵巣症候群と診断されます。

多嚢胞性卵巣症候群の診断方法について、詳しくは、『どのような検査が必要?多嚢胞性卵巣症候群の診断の流れ』をご覧ください。

多嚢胞性卵巣症候群の治療

患者によって、現れる症状やその程度、あるいは合併症はさまざまです。糖尿病を合併する場合などは婦人科だけでなく、必要に応じて内科と連携をとりながら、総合的かつ長期的に取り組んでいくことが重要です。また、本人が現在妊娠を希望しているのか、希望しないのかによっても治療方法が異なります。

いずれにせよ、肥満をともなう場合には、糖尿病の発症を予防する観点からも、まず食生活を見直したり、ライフスタイルを改善することが重要です。すぐに妊娠を希望する場合には、排卵誘発剤であるクロミフェンを内服します。多くの場合、クロミフェンで排卵が促されるのですが、クロミフェンを内服しても排卵が見られない場合には、インスリン抵抗性改善薬の併用や、性腺刺激ホルモン剤の投与を行うなど、段階的な治療を試みます。これらの治療は基本的に保険適応となります。

これらの治療が奏功せず妊娠できないようなら、体外受精・胚移植という選択肢もあります。それぞれの治療のメリット、デメリットを理解したうえで、医師ともよく相談して治療方法を選択しましょう。

未婚であったり、既婚でも現在すぐには妊娠を考えていない場合には、ホルモン療法を行います。この場合、低用量ピルや、黄体ホルモン剤を周期的に内服する方法などがあります。ホルモン療法により生理を規則正しく起こすことで子宮体がんのリスクを下げることができますし、アンドロゲン過剰によるニキビが減るなどの効果が期待できます。

多嚢胞性卵巣症候群の治療方法について、詳しくは、『妊娠を希望しない場合の多嚢胞性卵巣症候群の治療とは』『妊娠を希望する場合の多嚢胞性卵巣症候群の治療とは』をご覧ください。

多嚢胞性卵巣症候群患者の妊娠の可能性

多嚢胞性卵巣症候群は、症状が重くなると無排卵となり自然の妊娠は期待しにくくなりますが、症状が軽い場合には不規則ながらも自然排卵が保たれている場合が多く、この場合には自然妊娠を期待することも可能です。

不妊と診断された場合でも、食生活やライフスタイルを改善したり、あるいは適切な治療を受けることで多くの場合妊娠を期待できます。

参考文献

  1. [1]日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会.“多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の診断と治療は?” 産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2014. http://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_fujinka_2014.pdf(参照2017-08-29)