スキンケア大学 ヘルスケア大学 メンズスキンケア大学

再発予防が期待できる多発性硬化症の新薬とは

更新日:2016/12/09 公開日:2016/06/20

多発性硬化症の検査・治療

多発性硬化症は根本的な治療法がないため、再発を防ぐことが大切です。近年、多発性硬化症の再発を減少させ、症状を抑えることに有効な新薬が登場しました。この新薬の作用・効果・副作用などをドクター監修のもとで解説します。

多発性硬化症の再発予防に有効とされる新薬の効果や副作用について説明します。

多発性硬化症の再発予防に新薬登場

根本的な治療法がない多発性硬化症は、再発をくりかえすうちに徐々に症状が悪化することがあります。そのため、多発性硬化症にかかった場合は、できるだけ再発を防ぐことが重要になります。

急性期の治療ではステロイド薬が使われますが、そのほかは対症療法となり、再発予防にはβインターフェロンの投与などが行われています。そして2015年11月には、多発性硬化症治療の新薬である「グラチラマー酢酸塩」が発売されました。この新薬は1996年に米国とイスラエルで承認され、2014年の段階では59か国で承認されている薬です。

グラチラマー酢酸塩は、多発性硬化症の再発を予防することを目的に1日1回20mgを皮下注射します。ドクターが認めた場合は、自分で注射をすること(自己注射)も可能です。

グラチラマー酢酸塩は、多発性硬化症が再発する回数を少なくし、たとえ再発しても重症になるのを防ぐ効果が期待できます。しかし、この薬は多発硬化症のすべての病型に効果があるわけではなく、効果が期待できるのは再発寛解型の場合です。

グラチラマーはどのように作用するの?

多発性硬化症は、中枢神経に障害が起こる病気です。神経細胞を覆う髄鞘(ずいしょう)、またはミエリンと呼ばれる部分が壊れることで、脳や脊髄からの情報伝達に障害が起こります。原因はまだよくわかっていませんが、以下に紹介する自己免疫疾患説が有力です。

免疫細胞の異常

ミエリンが壊れる原因は、免疫細胞が自分自身の細胞を異物と認識して攻撃してしまう、または免疫の異常が考えられます。免疫細胞にはT細胞やB細胞などがありますが、このうち多発性硬化症の再発には免疫細胞の中でもT細胞が深く関わっており、再発予防にはT細胞の活性化を抑えることが必要です。

T細胞の活性化を抑制するポリプペプチド

多発性硬化症の治療薬であるグラチラマー酢酸塩は、免疫調整薬という種類の薬にあたります。自己免疫疾患ではT細胞が活性化していますが、活性化するにはスイッチとなるものが存在します。T細胞の働きを抑えるためには、活性化のスイッチとなるMHC(主要組織適合遺伝子複合体)と呼ばれる物質の働きを阻害することが有効です。

グラチラマー酢酸塩は、4種類のアミノ酸(L-グルタミン酸、L-アラニン、L-チロシン、L-リシン)から構成されている「ポリペプチド」という混合物で、MHCの働きを阻害してT細胞の活性化を抑制する働きがあります。

この働きにより、多発性硬化症の再発予防が期待できるのです。

国内の臨床試験の結果や副作用の報告は?

グラチラマー酢酸塩は、インターフェロンに比べて発熱やだるさなどの副作用が少ないとされています。

とはいえ、国内外で行われた臨床試験によると、血液検査の異常も含め、ほとんどの人になんらかの副作用が見られます。主なものは注射部位が赤くなる紅斑などですが、約1割の人に発熱や倦怠感、動悸などが見られました。重大な副作用として、注射直後のアレルギー反応や注射した部位の壊死(えし)、過敏性反応なども報告されています。

多発性硬化症の再発を防ぎ、再発しても重症になることを抑える働きをする新薬、グラチラマー酢酸塩。副作用が懸念されますが、再発のくりかえしで生じる症状の悪化防止が期待されます。

ヘルスケア本