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妊娠を希望する場合の多嚢胞性卵巣症候群の治療とは

更新日:2018/06/15 公開日:2016/10/28

多嚢胞性卵巣症候群の検査・治療法

不妊の原因となる多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は本人が妊娠を希望するか、しないかによって治療方法が異なりますが、妊娠・出産にかかわるため、早めの対応が重要です。ドクター監修のもと、妊娠を希望する場合の治療法を解説します。

不妊の原因として代表的な排卵障害の1つである多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)は、本人が妊娠を希望するか、しないかによって治療方法が異なります。ここでは、妊娠を希望する場合の治療について解説します。

肥満をともなう場合の治療法

BMI(肥満度を表す数値)が25(kg/平方メートル)以上の患者を肥満とし、まずは食事指導やライフスタイルの改善、運動によって適切な減量を目指します。目安としては、5~7%の減量を目指します[1]。減量によっても排卵が認められない場合には、肥満をともなわない場合の治療法へ移行します。

インスリンの異常が見られる場合は、ライフスタイル改善の後、もしくは並行してメトフォルミンやインスリン抵抗性改善薬の投与も考慮する必要があります。

肥満をともなわない場合の治療法

治療法によっては2人以上の胎児を宿す多胎妊娠や、卵巣が膨れ上がり、腹痛や腹水などの症状が出る卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高まるため、段階的な治療法が選択されます。

クロミフェン療法

第1選択薬としてクロミフェン(50~150mg/日)を使用します。一般的に多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)では50%の排卵率と、10~20%の妊娠率が得られています[1]。

クロミフェン療法でも排卵がなく、肥満やインスリンの異常が認められる場合は、さらに適切な減量に努めましょう。その場合に、メトフォルミンやインスリン抵抗性改善薬を併用することで、高アンドロゲン血症の改善や排卵率・妊娠率・流産率の改善が見られたという報告もありますが、最近ではクロミフェン単独による排卵誘発効果には及ばないとの報告がされています。そのため、血糖値に異常が見られる耐糖能異常(糖尿病予備軍ともいわれる)やインスリンの異常が認められる多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)にのみ、メトフォルミン投与が望ましいとされています。

ゴナドトロピン療法

強力な排卵誘発法で、クロミフェン単独あるいは併用療法の効果がみられない場合に行います。ただし、排卵率が高まる反面、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が発症しやすいので、注意が必要です。ゴナドトロピン療法は、患者の経済的・肉体的負担が大きいため、治療前もしくは治療開始後早めに一般不妊検査を受け、異常のないことを確認しておきましょう[1]。

腹腔鏡下卵巣多孔術

電気メスやレーザーにより、卵巣表面に多数の穴を開け、排卵を促す手術です。その効果はゴナドトロピン療法に匹敵するうえ、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが少なく、受診回数が少なくて済むなどのメリットがあります。ただし、効果の持続が1~2年以内と比較的短期間の場合が多いことや、外科手術にともなうリスクといったデメリットもあります[1]。メリットとデメリットの両方を理解したうえで、医師とも相談して適切な治療法を選択しましょう。

体外受精・胚移植

クロミフェン療法でも、ゴナドトロピン療法でも効果が見られず、腹腔鏡下卵巣多孔術も成功しなかった場合、または卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を引き起こした場合には、体外受精・胚移植という選択肢もあります。

未成熟卵子を採取し、体外で成熟させた後、顕微授精を行って得られた受精卵を子宮内に胚移植するIVFは、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)発症の危険性がなく、肉体的・経済的負担も軽減されます。このように利点が多いようですが、未成熟卵子を採取することの困難さや、低成熟率、胚移植の低さといったデメリットもあります。

一方、未成熟卵の体外成熟培養(IVM)は、卵巣刺激を行わないので卵巣過剰刺激症候群(OHSS)発症の危険性がなく、毎日の排卵誘発剤の注射を行わないため、肉体的・精神的負担が軽減されます。ただし、通常の体外受精・胚移植(IVF)に比べて、胚移植あたりの妊娠率が低いことがデメリットです。

それぞれの治療法のメリット、デメリットを理解し、自分の症状や生活環境、社会的活動、肉体的・経済的負担などを十分に考慮して、適切な治療法を選択することが大切になります。

参考文献

  1. [1]丸山 哲夫ほか. E.婦人科疾患の診断・治療・管理 3.内分泌疾患, 日産婦誌 2008; 60(11): N477-N484