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万代恭嗣 先生

東京山手メディカルセンター 院長

JCHO東京山手メディカルセンター  万代恭嗣 院長先生

万代恭嗣

JCHO(ジェイコー)のミッションと「東京山手メディカルセンター」の定義する地域について

はじめに、独立行政法人 地域医療機能推進機構(以下、JCHO:ジェイコー)は、全国に57病院に加え、複数の介護老人保健施設、訪問看護ステーションを併せ持つ独立行政法人です。

JCHOには、2つの大きなミッションとして、「地域医療」と「地域包括ケアシステム」の要になること、そのための人材育成をすること、があります。その上で、それぞれの病院が考える地域というものを定義し、「地域医療」と「地域包括ケアシステム」の要になっていこうと、すべての病院が日々研鑽を積んでいます。

「地域包括ケアシステム」とは、厚生労働省によると、『高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進する』(出展:厚生労働省ホームページ)とあります。

要約すると、「住まいを中心として、本人の選択や心構えを構築尊重し、地域で日常的に高齢者を支える医療と介護と保健・福祉の仕組みを作ろう」ということで、高齢者が必要とするサービスを、中学校区(概ね30分圏内)を単位として展開しようとしています。

一方で、全国各所にさまざまな地域特性があって、移動手段ひとつをとっても、車中心の地域もあれば、大都市のように電車やバスなど公共の交通機関が発達している地域もありますので、一概に30分と言っても、単純な距離による想定どおりにならないのが実情です。すなわち、「地域医療」や「地域包括ケアシステム」にいう地域を考えるとき、一概に30分圏内や、2次医療圏、という単位で区切るだけではなく、患者さんがどのエリアから来院されるのかがマーケティングのひとつの要素になります。

「東京山手メディカルセンター」のある新宿区西側での現状については、まず2次医療圏は、新宿区、中野区、杉並区の3区が「東京都区西部医療圏」と規定されていますが、むしろ西武線沿線の患者さんも多く来院されます。

実際は、杉並区の患者さんよりは、豊島区からの来院が多く、豊島区、練馬区や渋谷区からの来院も目立ちます。また、診療科目によっては、全国各地から来院されます。

「東京山手メディカルセンター」における地域の定義としては、患者さんの居住地域を縦軸とし、横軸は当院の専門性として、2次元的にマトリックスするのが、当院の考える「地域」になると考えています。

「東京山手メディカルセンター」の診療機能と役割について

国の医療政策において、5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)、5事業(救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児救急医療を含む小児医療)の推進が引続き求められています。

JCHOはこの、5疾病5事業なかでも5事業を中心に展開することが、行政法人地域医療機能推進機構法に定められており、当院のミッションにも当然含まれています。

しかし、そのすべてを100%推進することは、病院の位置する地域性や病院の規模と診療機能などを考えると、すくなくとも当院では現実的ではありません。

例として、当院における周産期医療のうち早産をあげると、34週以下の母体や胎児への医療提供では低体重の未熟児が多くなり、医師や施設の問題で、100%の診療機能の提供が困難な状況です。

ですので、対応困難な領域の医療提供は、近隣の大学病院が設置している「周産期医療センター」との連携で補完しながら、当院で担える機能に準じた医療を、しっかりと行っていくことになります。

救急医療は、高齢化の進捗とともに、救急車での搬送数も増えており、当院でも力を入れています。また、へき地医療では、当院の医師を新島へ3ヶ月単位で派遣したり、福島の浪江町の避難先の二本松へ、外来担当医の派遣をしたりしています。加えて今年度から、全国のJCHOの医師不足の病院へ、できる範囲で医師の派遣も行っています。

当院は昔から肛門疾患、わかりやすく言うと「痔」で有名です。マーケティングとして、日本地図を広げて1回でも当院を受診された患者さんをマッピングしていくと、肛門疾患の外来は、沖縄県などごく一部を除き全国から来院されています。

これは、当院出身の医師が全国で活躍しており、当院の高度な専門医療を理解し「最後の砦」として認知されていること、また、「大腸肛門病センター」や「炎症性腸疾患センター」を中心に、全国レベルで高度な医療を提供するため、専門性の向上を図っていることが挙げられます。

一方で、患者さんからすると、肛門や腸といった、日常生活で重要な機能を持っている器官は、「治った、治らない」が如実にわかります。特に肛門機能は、日常生活で極めて大切な機能ですから、治療がうまく行っているのか、そうでないのか、患者さん自身の感覚で評価できます。つまり、鋭敏な人間の感覚を満足させるよう、われわれもしっかりと治療に向き合わなければなりませんし、当院では、それが可能ということです。

当院のほかの診療科も同様に、安心安全の医療の提供と専門性の向上を目指し続け、「治療が平易な患者さんも、難しい患者さんも、同じように治療をする」ために、日々、自己研鑽を積み重ねています。

地域との密度の高い医療連携が、地域医療の発展を促す

「東京山手メディカルセンター」では、登録医制度を設けています。これは、地域の開業医の先生に事前にご登録をお願いし、病院と診療所の「病診連携」を蜜にして行くための仕組みです。

具体的な施策のひとつとして、当院の医師は医療用PHSを勤務中、常に身に着けていますが、この電話番号を登録医の先生方に開示しています。医師to医師で直接連絡を取り合えますから、診療所で受診中の患者さんに緊急性があれば、すぐに対応できるようになっています。

また、地域全体での連携を強化するために「医療連携の会」を年に2回、定期的に開催しています。訪問看護や介護関係の職員の参加も増えてきており、やはり、冒頭お話した「地域包括ケアシステム」を考えると、医療だけでなく介護との連携も大切であると感じています。

当院の活動のひとつとして、どなたでも参加できる市民公開講座を定期的に開催しています。東京山手メディカルセンターの診療機能を紹介しつつ、例えば、整形外科系や糖尿病など、幅広いテーマを取り上げています。

また、毎年春と秋に「看護フェスタ」を開催して、血圧や骨密度の測定サービスや、簡単な健康相談を開催しています。ご好評をいただいておりまして、フェスタに参加して、「普段気になっている健康のこと」などを相談いただければと思っています。

これからの地域医療は、行政、医療・介護、そして地域住民の3者で、新しい時代を創っていくことが大切です。

2025年には、いわゆる団塊の世代が75歳以上になり、高齢者人口は3500万人、人口比率で30%、3人に1人が高齢者になると推計されています。

医療と介護の需要が急激に増える中、病院と診療所の「病診連携」に加え、「医療介護連携」はもちろん、地域の皆さんの理解と協力が不可欠になっていきます。医療や介護に任せきりではなく、ともに協力しながら、新しい「地域医療」を創っていければと思っています。