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上西紀夫 先生

公立昭和病院 院長

公立昭和病院 上西紀夫 院長先生

上西紀夫

公立昭和病院の診療機能と地域における役割について

(編集部) 公立昭和病院の診療機能についてお伺いできますか?

(上西先生) 高度急性期の医療センターとして、東京都の北多摩北部医療圏の小平市、東村山市、清瀬市、東久留米市、西東京市に加えて、東大和市、小金井市の、7市約90万人のエリアをカバーしています。

当院は、3次救急病院として「救急医療」と、がん診療連携拠点病院として「がん診療」の2つの診療領域を主なミッションに、地域周産期母子医療センターとしての役割、また、地域医療支援病院として地域医療を支えるなど、地域の中核病院として、幅広い役割と機能を兼ね揃えています。

「救急医療」については、年間約7500台の救急車の受け入れを始め、心筋梗塞などの心疾患や脳卒中、産科で言えば、母体や胎児の急変による搬送、そして事故などによる外傷疾患、また、増加傾向にある精神疾患を抱えている身体合併症など多岐にわたり、年間1万8000件程度の救急の患者さんを受け入れています。

また、北多摩地区もほかの地域同様、高齢化が進んでおり、それに伴い「がん」も増加傾向にあります。近年、手術後の回復が比較的早い、内視鏡手術といった低侵襲の治療法が発達しており、当院でも積極的に行っております。

例えば、大腸がんの腹腔鏡手術は年間100症例程度、また、胃がんの腹腔鏡手術は年間50症例程度と、全国的に見ても比較的多くの手術を行っています。高度な医療技術と環境を整えていますので、患者さんに安心して治療を受けていただけます。

先ほど高齢化が進んでいるとお話しましたが、一方で、北多摩地区は人口が微増している地域でもあり、お産を中心とした周産期医療のニーズもあります。

地域周産期母子医療センターの機能として、基本的にはハイリスクなお産の受け入れが多くなります。例えば、高齢出産や多胎児出産、また、母体や胎児の急変による救急搬送などです。

また、この地域は、新生児の集中治療室であるNICU(Neonatal Intensive Care Unit:新生児特定集中治療室)や、新生児の回復を集中的に行う治療室GCU(Growing Care Unit:新生児回復室)が少なく、当院のNICU6床、GCU12床の計18床を含む、専門施設と専門医療は、地域において非常に重要な役割であると考えています。

通常分娩は地域の産婦人科診療所で、高齢出産や多胎児、急変などは当院と、地域で診療機能や役割を分担して、周産期医療を提供しています。

 

(編集部) 多岐にわたる高度急性期医療を中心とした病院の機能に加えて、「地域医療支援病院」の指定を受けています。役割について伺えますか?

(上西先生) まず「地域医療支援病院」とは、地域の中核病院として、高度な検査や手術、治療を行い、地域医療の中心的な役割を担う機能を持っている病院のことです。そして、病院で完結していた医療(病院完結型医療)から、地域全体で診療機能を分担して、地域で支える医療(地域完結型医療)へ転換していく中で、地域医療の中心的な役割を担うことが求められます。

地域完結型医療では「地域医療連携」が大切で、具体的には、日常的に良くある病気(Common Disease)の治療や簡便な検査は、地域の診療所やクリニックが中心となって行い、より専門的な治療や検査、救急医療は、地域医療支援病院を中心に病院が担うという「機能分化」が進んでいます。

患者さんは、まず診療所やクリニックで診療を受け、かかりつけの先生が必要と判断したら、紹介状(診療情報提供書)を持参の上、当院を受診してください。また、当院での入院や手術、加療が終わった後は、紹介元のかかりつけ医の先生のもとで、継続的な治療や検査、経過観察を行います。

こういった「医療連携」推進するために、北多摩北部医療圏内の42の病院と医師会の先生方による「北多摩北部病病連携会議」を、当院が幹事となって年2回開催し、当院を含む、それぞれの病院の診療機能や特徴、現状などを、医師会の先生方と共有し、相互理解を深めて、医療連携を推進しています。

また、当院は高度急性期を担っていて、治療や手術後の回復やリハビリについて、専門の病院への転院を患者さんへお願いしています。

入院にはどうしても安静が伴います。安静期間が長いと筋力の低下を含む身体機能の低下が起こり、それに伴い身体にさまざまな不具合が生じる「廃用症候群」のリスクが高まります。当院では「急性期リハビリテーション」を行っていますが、治療後は、専門的なリハビリテーションを行う必要がありますので、専門の病院へ転院し、しっかりと回復していただければと思います。

地域全体で、患者さんの治療や回復にあわせて、その時々で適切な医療を受けていただくために、地域の診療所やクリニック、病院が連携して、環境を整えています。

当院では、医療福祉相談室や医療連携室を設置し、患者さんとご家族のサポートを行っていますので、ご不明点などありましたら、ぜひお声がけください。

誇りと熱意のある病院へ生まれ変わるための改革

(編集部) 職員の皆さんの挨拶が気持ちよく、患者さんへの目配り、心配りのきめの細かさを感じました。病院であることを忘れてしまうくらい活気がありますが、何か特別なことをされているのでしょうか?

(上西先生) 私が就任した当初は、評判がよい病院とは言えませんでした。例えば、患者さんからは「いつも混んでいて待ち時間が長い」や、地域の先生方からは「紹介した患者さんの情報があまり返ってこない」や「電話をしても院内の部署をたらい回しにされた挙句に、切れてしまう」など、特に接遇面が良くありませんでした。一方で、職員を見ていると一生懸命にやっていて、医療も高いレベルにあると感じていました。

いわゆる良い病院にしていくためには、まずは職員が気持ちよく、誇りを持って働いていることが大切です。「頑張っているのに評価を傾けない」という、すごくもったいないことをしていると感じる中で、まずは、職員に誇りを持ってもらえるよう改革を始めました。

自分たちが「良い医療、良い看護、良い介護」をしていることを実感してもらうためには、客観的な評価が必要と思い、外部評価をしてもらいました。その結果をもとに、細部にわたるまで検討を行い、改善を重ねてきた結果、自発的に患者さんに向き合える、雰囲気の良い病院になってきたと思います。

また、地域の先生方とのコミュニケーションも、我々の改善や活動についてご理解もいただき、当初よりも改善され、院長就任当初の外来患者数も1日当たり1500人から1000人程度となり、病診連携も推進されています。

2年前には、NPO法人イージェイネットによる「働きやすい病院評価・認証事業」にて、「働きやすい病院」と認証されました。また、病院の質の改善を促進するために「病院機能評価」の受審や、高度な医療機能を保持している目安となるDPC医療機関群Ⅱ群(高診療密度病院)の指定を受けるなど、職員の意識が変わるに連れ、さまざまな評価や指定を受けることができました。

こういった外部の評価や指定を受けることで、自分たちの医療や活動に自信をもつことができ、さまざまなアイデアが出てきて、改善や施策が積極的に実行されるようになりました。

地域の医療人同士の情報共有を推進し、地域医療をしっかり支えるために

(編集部) 今後の公立昭和病院の方向性と、読者へメッセージをいただけますか?

(上西先生) 北多摩北部医療圏(小平市、東村山市、清瀬市、東久留米市、西東京市の5市)には、全部で42病院あります。その中で3次救急の病院は、公立昭和病院しかありません。

だからこそ、2次救急や回復期リハビリテーション、精神科など、地域の病院としっかり連携することが大切です。先ほどお話した、当院が幹事として開催している「北多摩北部病病連携会議」をはじめ「顔の見える連携」を推進し、地域全体の医療水準のレベルアップに貢献していくと同時に、地域の皆さんに安心していただける環境をさらに強化していきたいと考えています。

これからの時代は、ICTの活用が必要不可欠です。例えば、電子カルテを、病院内だけではなく、診療所と連携できるものに変更したり、病院と病院の情報共有を促進できるツールを導入したりと、テクノロジーの進化に合わせて、今後導入するツールを選択していきたいと思います。

また、高齢化社会では、地域の介護スタッフや医療ソーシャルワーカー(WSW)との、診療情報の共有も視野に入れないといけません。

地域医療の連携を考えると、地域の中核病院として、ICTを活用した情報共有と連携強化は、必要不可欠ですので、この領域も推進していきたいと考えています。

地域医療を支えるために、私たち病院や地域の先生方が、さまざまな施策を行っていますが、患者さん側も、病気を克服するために、病気を理解し、医師や看護師とともに治療に取り組むことも大切です。

当院では患者図書室「やすらぎの森」を設けていますので、お気軽にご利用ください。また。医療情報を広く発信する試みとして、「公立昭和病院の最新の医療」という書籍を発行しています。病気と治療をやさしく説明していますので、ぜひ、ご一読ください。

公立昭和病院は、今後も高度急性期医療を中心に、地域医療を支えてまいります。医療に少しでも興味を持って知識を蓄えていただきながら、何かあればいつでも来院いただければと思います。